Dance Fanfare Kyoto

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インタビュー佐藤健大郎作品 ねほりはほり (Dance Fanfare Kyoto vol.02)

佐藤健大郎作品 [つくる前]

【岡崎大輔→佐藤健大郎 インタビュー (1回目) 2014年4月7日(月)京都 東大路丸太町周辺】
岡崎さんと佐藤さんの初顔合わせ。佐藤さんの稽古初期の取り組みと、その背後にある意図を、岡崎さんの言葉が丁寧に少しずつほどいていくような対話になりました。ダンス作品づくりの内側に初めて触れる岡崎さんには、新鮮な驚きも。

見たことのないものを期待してつくる

佐 藤:
ダンスの作り方はいろいろあって、たとえば自分がずっとやってきたダンスのメソッド――たとえばバレエなど――をベースに組み立てることもあれば、イメージや記憶や言葉などから生まれた動きを繋げていくこともあると思いますが、特に自分が活動しているダンスの分野では、まずはアイデア、コンセプトから作り始めることが多い。ただ、そういった作り方のダンスを観ていると、個的だな、と思うことが多くて。
岡 崎:
個的、というのは?
佐 藤:
個人的、その人しかわからない、ということですね。動きを作る時にどこから発想を得たかとか、なにをイメージして踊っているかということが、観ているだけでは分からなくて、会話をしてようやく分かることが多いです。ダンスなのだけれど、身体の動きだけがあるのではなく、ずっと言葉が付きまとっていて、クリエイションもほとんどその言葉のことに時間を割いてしまうんです。そういったことが気にはなっていて。 今回は、自分が新しい動きを出すっていうことはどういうことなんだろう、ということに関心があります。ぼく自身が今までやってきた経験というものを見つめたいという時期でもあって。自分の癖や思考回路、ボキャブラリーを、とにかく隠さず全部出して、それを整理したい。それはダンサーに対してもそうで、今はダンサーそれぞれの過去のダンスの記憶を手掛かりに稽古をしています。
岡 崎:
稽古は今、3回目とうかがいました。
佐 藤:
はい。初回は、僕がやってきたことを話したり、大事にしているトレーニングを覚えてもらったりしました。2回目、3回目はさきほど言ったことを試しています。行き先がどこになるのか、まだわからないんですが。
岡 崎:
ご自身でやってきたことを整理する機会として、今回の作品づくりに取り組んでいるのでしょうか。
佐 藤:
そうですね。今までは、自分が培ってきたテクニックを人にやってくれと言ったことがあまりなかったんです。そのダンサー自身に発想してもらったことをピックアップして組み立てていくことが多かったんですが、それってある意味妥協なんです。つまり、自分が時間をかけてやってきたことをそのままやってもらうのは無理だろうっていうこと。それと同時に、自分と同じ様な動きをする人を増やしたいとは思っていないんですね。でも、今回揃った3人のダンサーが、それぞれキャリアもあり、身体もきくので、今回はそこまで踏み込んでみようと思っています。自分の中にある感覚を相手にきちんと伝える。そういう時の言語ってとても曖昧でもあるのですが、身体を使いながら丁寧にやっています。自分のバックボーンを伝えて、かつダンサー自身のバックボーンも引き出せるようなことができればと。
岡 崎:
僕のようなダンスのことをほとんど知らない人間からの勝手な印象では、作品づくりって、作り手がイメージを投げて、こんなふうにやってくれって出演者にリクエストするものだと思っていたので、出演者から出てきたものを編集していくやり方というのは想像していませんでした。意外ですね。
佐 藤:
他の人がどんな風にやっているかはわからないですが、僕はそんな感じですね。たとえば僕が見本を示してしまうと、それを追おうとしてしまう。自分と同じことをやろうとしているのを見るって、気持ち悪くて。でもそこを一回切り替えてみよう、というのが今回のクリエイションですね。
岡 崎:
なるほど、おもしろいですね。確かに、こういう風に動きたい、というイメージがあれば、わざわざ人にやってもらわなくても自分でやる方が早いですよね。むしろ、人にやってもらうっていうことは、自分ではできない何かがそこで発生してくるっていうことがあるかもしれません。
佐 藤:
そこに期待があるんだと思います。ぼくが見たことのないものを見せてくれるんじゃないかっていう。

まず、手札を全部出してみるところから

佐 藤:
岡崎さんは、ダンスを観られたことありますか?
岡 崎:
あります。以前は、ダンスを観ていても自分の中に何も起って来なくて、どうなんだろう…と思っていた時期もあったんですが、ある日ダンス公演を観ていたら、あ、これって木が生えているみたいに見える、って思ったことがあったんです。それをダンサーに直接伝えたら、「あ、それもあり」って言われて。それもありってどういうことですかって聞いたら、「別に意図しているものはないから、見てもらった人に感想を聞かせてもらったら参考になる」と。あ、そういう感じで見ていいのかって思ってからは、普段全然使ってない頭の部分が開く感じがして、それからよく観るようになりました。これはいったい何だろうって、頭痛くなるぐらいまでじっと観るのが好きですね。
佐 藤:
そういう風に観てくださると嬉しいですね。ダンスを見ながら、違うことを想像したり、観ている人自身のいろんな時間にワープしていくような感覚が、ダンスの面白さかもしれません。でも、よく「分からない」っていう感想を聞くことがあって。もちろんそれも素直な意見だとは思うんですが、やっぱりショックですね。分かるか分からないかで観る人には向かない芸術なんじゃないか、岡崎さんみたいに、これはなんだろうっていう視線があってこそかな、とも思います。
岡 崎:
少し話題が戻りますが、ご自身のやってきたことを整理しようとされていることについて、そもそもどうしてそこにチャレンジしようと思ったんでしょうか。きっかけはありますか?
佐 藤:
どこかでダンスって、あるひとつの動きを、発想によって変容させたり、発展させていって、自分から離れていくことがよしとされているような感覚があって。でも、その動きの発展に興味がなくなってきたんです。つまり、どんどん発展していこうとしても、その人自身の質は変わらないというか、本人は新しいことをしているつもりでも、あなたはあなたでしょ、っていう。もちろんそれを解き放ちたいと思ってみんなやっているんだろうけど、むしろ今の自分から離れていこうとすることではなく、今まで自分がやってきたことをきちんと見ていけば、できることとできないことがすごくクリアにわかるんじゃないかと。むしろ、これ以上自分は出来ないっていうことを知る方が、自分のことを理解できるんじゃないかと思って。 だから、自分が今までやってきたことを全部出したいんですね。たぶん、空っぽになれば次のステップが待っている。
岡 崎:
では、今回の作品づくりは、佐藤さんにとって次への区切りの意味があるんでしょうか。
佐 藤:
そうなると思います。 ぼく、作品ができていく過程がおもしろいんですよね。ダンス初心者の方を対象にワークショップをしたりするんですが、一緒にリハーサルを重ねている4ヶ月くらいの間に、最初は何もできなかった人が、動きが変わったり発想が変わったり、どんどん変化していくんです。それは、僕の中ではすごくダイナミックだし、感動する。でも、お客さんは最後の発表だけしか見ないので、過程の面白さを楽しんでいるのは僕だけなんですよね。その面白さをお客さんとどうやって共有できるんだろうということを考えていると、ダンサーと踏んでいくステップも丁寧に進めていかないとな、と思っています。
岡 崎:
先ほどから何回か出てきていますが、佐藤さんにとっては「共有すること」という言葉がキーワードなんでしょうか。
佐 藤:
正確に言うと、自分たちが共有しようと思って共有すること、たとえば同じ時計を持っているとか、そういった小さい話での共有ではなく、もうちょっと大きい話として、僕たちがすでに共有している、共有してしまっていることというのがあるんじゃないかと思っていて。それを、ダンサーたちと一緒に探したいなと。
岡 崎:
ダンサー3人で共有されているものが、実はお客さんとも大きいなにかのくくりで共有されていて、ダンスを観ることで「あ!」って繋がって行くような、そんな感覚が芽生えたら、おもしろいですね。初めて見たのにしっくり来たり、なんだか見覚えがあるように思ったり…感じ方はそれぞれだとは思うんですけど。

お客さんと直にコミュニケーションしたい

岡 崎:
佐藤さんがダンスを始めたきっかけはどのようなものですか?
佐 藤:
もともと絵が好きで、大学の時は、絵を描いていたんです。でも、絵を描いてグループ展をしても、自分はバックヤードにいて、お客さんは見て、アンケートを書いて残して帰って行く。その遠さが嫌でした。ダンスがしたいということよりは、もっとコミュニケーションしたいっていうことが欲求としてありました。
岡 崎:
直接お客さんとやりとりをしたい、という気持ちがあったんですね。
佐 藤:
でも、一緒に踊るのと、踊りを見てもらうっていうのも、かなり違いがありますね。やっぱり、踊りって踊るものだなって思いますよ。そして、ダンスをやってる人って、踊りをやることでなにかを見せたいというよりは、踊りたい、っていう人が踊ってる。
岡 崎:
踊りを見せてるんじゃなくて、踊りたいから踊っていて、それを見た人は好きに見て、感じたことを伝えて。その関係、おもしろいですよね。別になにかを伝えたかったら、話をすればいいですからね。でも踊るからには、違う理由があると。
佐 藤:
今、話をしていて改めて思いましたけど、今僕がやっていることでは、言葉で伝わってしまうかもって思いました。見てもらわないと伝わらないことがある、そういうところまで持って行かないといけないですね。
岡 崎:
先ほどから何回か出てきていますが、佐藤さんにとっては「共有すること」という言葉がキーワードなんでしょうか。
佐 藤:
言葉でしゃべったら、そこで可能性が閉じられるなという気もします。見せると、それはいろんな可能性を見る人に委ねられるので、いろんな人がいろんなように膨らませてくれますよね。それが醍醐味なのかもしれません。

インタビューを終えて

岡崎大輔:
今回のインタビューは素直に自分が聴きたいと感じたことを質問することを第一に考え、聴いたことを自分なりの言葉にして佐藤さんに返し、お互いの共通認識をつくりながら進む時間になったと振り返っています。印象的だったのは「空っぽになれば次のステップが待っている」という言葉です。自分がやりやすいように、やってきたようにではなく、未知の領域へ進もうという佐藤さんの意思ですが、自分だけではなく3人のダンサーとチャレンジしようとなさっています。そのプロセスでは自分はもちろん、ダンサーとのやり取りの中でも多くの葛藤が生じると思います。それらすべてを引き受け昇華させられた時、どんな作品に仕上がるのか、非常に興味深いです。

佐藤健大郎作品 [つくっている最中]

【岡崎大輔→佐藤健大郎 インタビュー (2回目) 2014年5月1日(木)京都 四条烏丸周辺】
岡崎さんが佐藤さんの稽古場を見学してからのインタビュー。初めて触れるダンスの創作の現場に、いろいろな発見や疑問をもった岡崎さんからの投げかけが、佐藤さんの言葉をふくらませていきます。

岡 崎:
今日は初めて稽古に立ち会ったのですが、今日は何回目の稽古だったんですか? また、何割ぐらいできている段階なのでしょうか。
佐 藤:
稽古は10回目ぐらいですね。段階としては、4割か5割ぐらいかなと。作品の出来上がりということではなく、自分が大事にしていることがダンサーに伝わった割合としてですが。
岡 崎:
最初稽古場に入った時は、ウォーミングアップをしていたんですよね。身体のある点を固定して動く、その固定している部分に意識を集中して、など…。すごく地道な作業ですけど、かなりこだわってされていた印象があります。基礎を重要視されているんだと思いました。ダンスの素人の感覚でいうと、そういう基礎の部分はすでに出来あがっている人たちが、いかに表現をするかということを稽古でやるのかと想像していたんですが、ああいった下準備に入念なチェックを入れているのを見て、少し驚きましたね。
佐 藤:
もしかしたら、ダンサーが身体のきく人たちだから、そういうことをやっているのかもしれません。ある種、いろいろ器用にできる身体に、拘束を加えるというか。その拘束の上で身体をどのようにコントロールできるか。そういったトレーニングですね。
岡 崎:
制限を与えることによって、逆に身体を開いていっているように見えました。自分が好きに動ける範囲と、自分はまだ気付いていないけど実は動ける範囲というのがあって、その後者に気づくための作業なのかなと。
佐 藤:
ダンサーにどんなトレーニングが必要なのか、ということを考えていて、そういう意味ではトレーニングもひとつのチャレンジではあります。
岡 崎:
今日の稽古では、佐藤さんからダンサーに対して「クレイジー」っていう単語が何度か出てきたと思うんですが、どういった意味合いなんでしょう?
佐 藤:
僕が今、ダンサーに出している注文が多いんですよ。あれもこれもやって、ここの部分はボリュームを上げて、とか。それを、僕自身がダンサーとして試してみた時に、まあ、ようやるわ、と思って。一度に5つぐらいのタスクをこなさなくちゃいけなくて、自由度も全然なくて、頭おかしくなりそうなのに、よくやってるなっていう意味で、クレイジー。やらせておいて何を言ってるんだと思いますが(笑)。
岡 崎:
ダンサーの方も、タスクに追いつけていないから、「戸惑ってます」っていうことをおっしゃってましたね。
佐 藤:
慣れるのがよいのかはわかりませんが、時間は必要だと思います。生理的に気持ち悪いことをしているわけなので。でも、自分たちだけの新しい感覚みたいなものを作るためには、そういったハードルが必要だと思うので、なるべく我慢強く取り組んでいけたらと思っています。ダンサーがやっていることを僕がちゃんとわかっていないと齟齬が生まれてしまうので、彼女たちが僕の投げかけたタスクにどう応えたかは見逃さないよう、集中しています。僕の感覚から離れすぎないように、ただ見る側にはならず、時々は僕自身もダンサーとして入って、体感をチェックしますね。
岡 崎:
なぜ、ダンサーとして入っておきたいと思うんでしょうか?
佐 藤:
やっていることが生理的に落ち着かないことばかりなので、どれだけしんどいかというのを把握しておきたいということと、自分が試して見ることでもっと遊べる可能性を新しく提示できるんじゃないかという二つがありますね。あとは、彼女たちに負けたくないっていうことでしょうか。だって、僕がやりたいと思っていることで、僕がやったことのないことをやっているわけだから、僕も混ぜてよっていう(笑)。
岡 崎:
稽古では、最初順調に進んでいるのかな、と思っていたら、一度スムーズにいかずに停滞した時間帯がありましたね。でも終盤から、佐藤さんも「それ、いい」って、ノッてくるような雰囲気になっていったのが、おもしろかったです。周りから見ると微細な差だと思うんですが、佐藤さんが「良くなってきた」と思う時、見ているポイントはどのあたりにあるんでしょうか。
佐 藤:
そうですね。思い浮かんだのは、ある形から次の形に行く時に、ちょっと前のめりで進んでいくような感じでしょうか。ひとつずつ置いていくのではなく、どんどん転がっていくような。つんのめりながら走っているような、でも転ぶほどバランスは失っていないような状態がいいなと。
岡 崎:
振付はどのようにできていっているんでしょうか。
佐 藤:
いわゆるコンタクト、という方法で作っています。ある人が、相手の身体を動かしたり、一緒に動く、そういったことを繰り返していって作った動きですね。
岡 崎:
型があるものなんですか? それとも、即興的に組み立てていくものなのでしょうか?
佐 藤:
ひとつルールがあって、どこか1点、身体の中に動かないポイントを作って、相手に身体を動かされても、そのポイントがずれそうになったら止める。動かす人は、その動かないポイントをどこか当てられるまでその人を動かし続ける。それを繰り返して、ひとつずつ動きを決めて繋いでいきました。
岡 崎:
確かに、支点を意識する、ということを今日の稽古でもかなり指摘されていましたね。
佐 藤:
言葉ひとつで動きって変わるんです。それを何度となく経験してきていますし、大失敗もしてきました。たとえば、本番前までうまくいっていたのに、直前にちょっと受けたダメ出しがすごく響いてしまって、本番がガタガタになってしまうとか。自分にとっては、その言葉の使い方の稽古でもありますね。
岡 崎:
佐藤さんの指示だしも、具体的にこうしてということを示さないですね。スピードを上げてくださいとか、離れてください、とか。ダンサーの方は、何がよくて何が悪いのかわからない、ということもあるかもしれませんが、具体的な動きを指定してしまうことで、閉じてしまう可能性もあるんだろうなと思いました。
佐 藤:
基礎のワークをやっている時は具体的な言葉、クリエイションの時は具体的ではない言葉を使うようにしていますね。ダンサーだったら、しつこく言わなくても、繋げて考えることができるはずですし、ダンサー自身の中でやっていることのおもしろさを増幅させていってほしい。僕は自分が大切に思っていることは言えるけれど、そのおもしろさへの鍵を開けるのはダンサー自身ですから。
同時に、クリエイションの先の具体的なイメージを僕が持っている状態でもないので、まずはやってみたことから出てきた問題を、直球で受けるようにしています。稽古場では、課題が出てきてはその答えを探し、また課題が出て…という往復ですね。おもしろいと思ったけれど、なぜおもしろいと思ったかがパッとわからない時に、考え直すとか。当たり前のことなのかもしれませんけど。なるべくまとめずに、分かった気にならないように意識しています。
岡 崎:
まとめるというのは、自分の過去の経験に照らしあわせて、正解か不正解かの判断をして、わかりやすいところに落ち着かせる、とも言えますよね。それをあえてしないのは、今までやってきていなかったことを見てみようとしている、ということですね。
佐 藤:
そうですね。でも話をしていたら、まだ自分は甘いなと思いました(笑)。まだ自分自身から離れきれていないというか。
岡 崎:
でも、完全に真逆に振り切ってしまっても、今までの自分とは違うことになりすぎてしっくりこないですよね。今までやってきたことと、やったことのない間のバランスをどう取って進んでいくのかを探していらっしゃるのかな、と思います。
佐 藤:
バランスという言葉でいうと、たとえばダンサー同士という関係と、ダンサーとお客さんという関係があるとして、そのどちらにも寄りすぎない点を探そうとしている、ということもあります。いずれかにとどまってしまうと、安定はするんだけど、おもしろくないというか。その重心が常にずれていきながらも、バランスが壊れるのではなく、バランスは成立し続けているっていう感覚が、ダンサーの中に芽生えたらいいなと思います。そして、その感覚を観客とも共有する方法はないかなと。
岡 崎:
ある一定の調子で進んでいくんだなっていうことではなく、あっちやこっちに行って、そわそわしつつもそれがスリリングで楽しめる、ということでしょうか。
佐 藤:
惑星と衛星みたいな関係で、どれも止まっていなくて動き続けているのに、バランスを取っているような。そしてその時、誰も中心にいないんですよ。僕が中心にいるわけではない。僕も振付家として、そのバランスの中に入っているというか。
岡 崎:
なるほど、おもしろいですね。見る人によっても、感じ方はかなり変わってくるかと思いますが、その違いも楽しめるようになるといいですね。わかる、わからないの問題ではなく、自分はこう感じた、ということで、いろいろな話ができるような。
佐 藤:
そうですね。少し手放した言い方になるかもしれないんですが、作品の感じ方、響き方って本当に人それぞれだと思います。こちらが意図しているものが届くこともあれば届かないこともある、あるいは意図していなかったことが届くこともある。想像力って誰しもにもともとそなわっているもので、それをもっと豊かに出来れば、という気持ちはあります。その豊かさの幅をどれだけ広げられるかっていうのは、自分がダンスをしたり、作品を作る中で大きな部分を占めているかもしれません。

インタビューを終えて

岡崎大輔:
初めて稽古見学をさせていただき、文字通り「つくっている」という印象を受けました。具体的には、佐藤さんの中にすでに出来上がったイメージがあってそこに合わせていく作業というよりは、佐藤さんがまだみたことのないイメージが湧き上がる瞬間をキャッチして、作品の要素として拾っていくようなやり方だと感じました。ただ拠り所のない中に居続けることはダンサーにも佐藤さんにもタフなプロセスになると思います。しかし、少しずつではあるものの、佐藤さんは確かに何かをキャッチされているようでしたので、それがどう積み重なり作品として出来上がるのか、とても期待が膨らみます。
上演作品 佐藤健大郎「筒状の白いsara」・松尾恵美「形創るこわれ
日程佐藤健大郎作品 2014年 6月7日(土) 12:30 8日(日) 15:00
松尾恵美作品 2014年 6月7日(土) 15:00 8日(日) 12:30
場所 元・立誠小学校 2階 音楽室 google map
料金 1,000円(当日券 +300円)
※ねほりはほりセット券 1,500円
上演時間 30分+トークセッション30分

関連PROGRAM

ARTIST

佐藤健大郎さとうけんたろう

大学卒業後ダンスを始める。2004年までヤザキタケシ+A.D.Cに参加。フリーになり、砂連尾理、山田せつ子、日野晃、伊藤キムとの作品に出演。7人のダンサーが集まり90分で一つの作品が立ち上げるプロセスを公開する「東山ダンスヤード」を企画。また、劇団への振り付け・出演、市民へのWSにも力を入れている。

INTERVIEWER

岡崎大輔おかざきだいすけ

京都造形芸術大学 アート・コミュニケーション研究センター 専任講師。数年前までアートとの接点が少なかった自身の経験をふまえ、コワーキングスペース往来の「暇活」(http://ourai.jimdo.com/himakatsu/art)を中心に、誰もがアートとの出会いを楽しめ、誰もがアートと親しめる場づくりを実践している。