私はDance Fanfare Kyotoに、その前身であるWe dance 京都 2012と、vol.01に当日の手伝いなどで参加したことがきっかけでvol.02からは実行委員会に入り、vol.03で初めて自分がディレクションするプログラムとして「トカティブカフェ」を担当した。
「トカティブカフェ」とは、元・立誠小学校の入口正面に位置する職員室にドリンクや軽食、古書の販売スペースを設け、観客や出演者が作品と作品の上演の間の時間を過ごせるように開放したスペースで、私は出店店舗や教室のレイアウトなどをコーディネートした。なぜ、「作品のクリエイションを通して身体の可能性を探る実験の場」と銘打っているDance Fanfare Kyotoのプログラムとして、作品を上演するのではなく、カフェを作ったのか。それは、いくつかの課題がvol.02の運営を通して見えてきたからだ。
vol.02の開催時も、休憩所として職員室を開放していたものの、机と椅子だけが配置されているそっけない空間だったので気軽に入れる雰囲気がなく、来場者も利用しづらかったことや作品の上演と上演の短い間に会場の外で食べ物を購入し、せわしなく食べ次のプログラムの観劇へと急ぐ観客の姿を少なからず目にしたことがあり、観客を迎え入れる設えとして改善出来ることがあるのではないかと思った。また丁度vol.02が終わりvol.03のにかけての時期に私自身が、ある作品の観劇後にお互いに感想を話す会や、最近見た舞台やアート作品、この次に観る予定の作品について話すという集まりに参加する機会があった。普段、人前で自分の感想を述べることは不安なことのように感じていたけれど、会に参加したことできちんと作品についてどう思ったかを自分の言葉で語ること、様々な感想があっていいということ、自分とは違う見方、捉え方をしていること、また思わぬ話にも派生し、今まで知らなかった情報を得るということが出来てとても刺激的と思える経験をした。今まで以上に自分が作品の何に心動かされるのか、どのように感じたかをより掘り下げて考えるきっかけにもなった。vol.03では「ダンスをとりまく言葉/対話」という全体のテーマが掲げられたこともあり、劇場へ足を運び同じ作品を共有した観客やアーティストが、作品について対話できる場所や時間をこのトカティブカフェで作ってみたいと思った。
出店をお願いしたのは、京都市内でお店を持ちまたいろいろな催事などにも参加して活動している店舗だった。2日間の公演日でドリンクを担当する店舗は日替わりで2店舗、軽食は両日ともに気軽に食べることが出来るパンを取扱う店舗とおにぎりを販売している店舗の2店舗、そして古書店の計5店舗の店舗に協力を仰いだ。実はその5店舗のうち、私がもともと知っていたのは3店舗だけだった。そのうちの1店舗の方とこの企画の打合せをしたときに、残りの2店舗を紹介してもらった。
今回それぞれの店舗へ打合せへ伺い、Dance Fanfare Kyotoのプログラムの話をしたり、お店の話を聞いたりすることができた。古書店を訪れた時、店頭に並んでいる本のジャンルがあまりはっきりわかれておらず、小説の横に料理のレシピ本があったり、いきなりDVDが並べられたりしていた。店長さんに「うちはいろいろな本に出会ってほしくてジャンルや新刊、古本と分けていないよ。」と言われ、ジャンルや世代を超えて作品作りをするDance Fanfare Kyotoのコンセプトのようだと思った。店長さんに選んでもらい会場で販売した古書は、ダンスやアートにまつわる本はもちろん哲学書まで幅広く、多くの方に手に取ってもらえた。他の店舗も、Dance Fanfare Kyotoオリジナルの包装紙やメニューを考えてくださりと違う角度からDance Fanfare Kyotoを盛上げることが出来たのではないかと思う。職員室は一般の方も出入り自由にしていたので、作品を観に来ていない人や、普段は遠くてお店には行けないけれど、元・立誠小学校だと近いので来ましたという参加している飲食店自体のファンの方なども足を運んでくださった。普段ダンスを観ない人達に、観劇とは違う形でDance Fanfare Kyotoの活動について知ってもらえたのではないだろうか。また和田ながらさんディレクションの「ねほりはほり」のアフタートークや、最終公演後に行ったクロージングトークもトカティブカフェをした職員室で行った。クロージングトークでは、実行委員が各テーブルで司会となり観客やアーティストが5~7名の4グループに分かれて「Dance Fanfare Kyotoはどうでしたか?」「これからどんな作品がみたいですか?」などの質問を投げかけディスカッションを行った。30分程度の短い時間であったもののアーティストも観客もそれぞれの立場からの感想を共有し、質問をしてそして聞くということが近い距離で繰り広げられたように感じ、とてもよい感想シェアの時間となった。
Dance Fanfare Kyotoが終了し、改めてトカティブカフェはチラシやウェブサイトに書いたコンセプトの「作品についてざっくばらんに話す交流の場」になっていたのだろうかと考えてみる。観客を迎え入れる設えはいままでのDance Fanfare Kyotoの中では整えられ交流の場として機能できたと思う。しかしトカティブカフェのような場所を作ればDance Fanfare Kyotoに関わる人達(観客、アーティスト、スタッフ)が自発的に対話をする場所となるだろうと思っていたのだが、アフタートークやクロージングトークなどで場所を使う的がある方が対話が生まれやすい空間になるんだなと感じ、対話する場としてはもう少し「トカティブカフェ」をどのような場所にしたいかという明確な思いが伝わる工夫が必要だったのではないかと思った。では人が作品と出会う場所やそこから対話へ繋がる方法はどのような形があるのだろうか。今どのような作品創造や発表するための場が必要なのか、自分を含めた観客が作品を観に行きたいと思うきっかけは何なのか、作る側と観る側との新たな出会いの場がどのように作品やその次の観客へ繋がっていくのかを丁寧に考えてみたい。そして表現する側と観客、お互いの思いを伝え合う場とそのきっけとはいったいなにがあるのかをもう少し探ってみたいと思う。
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AUTHOR
竹宮華美たけみやはなび
1990年生まれ、愛媛県松山市出身。京都造形芸術大学舞台芸術学科舞台デザインコース卒業。「Dance Truck Project」、『今、あなたが「わたし」と指差した方向の行く先を探すこと』等に制作として携わる。2014年よりDance Fanfare Kyoto運営に参加。2015年4月から京都造形芸術大学 共同利用・共同研究拠点(舞台芸術研究センター内)の事務局員。