Dance Fanfare Kyoto

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lonely womanについて ルールの手引きと質問 (Dance Fanfare Kyoto vol.01)

lonely woman ルールの手引き

ルール
ダンサーは立ったその場所を動いてはならない。
地 図
横に並んだトリオでダンスする・・・・・・空間位共同態
交代する縦のデュエットでダンスする・・・時間位共同態
手引き
① ダンサー3人は、前を向いて横一列に並んで立つ。
② ダンサー各自は、それぞれ<開始時>に正面向き直立の瞬間を経過する。
③ 開始後30分間は【ルール】と【地図】の範囲内でなんでもできる。
④ 30分経過時点では、次の3人と交代が成立しているべきである。

 伝説のダンス・プロジェクト「偶然の果実」の中で生み出され、第1回バニョレ振付コンクールにおいて、日本国内最優秀賞を受賞、バニョレでのダンス・フェスティバルに日本代表として参加のため渡仏するも、その即興性の強さのためにフェスティバルの主催者から上演を拒否されたという伝説を持つ演目です。
 この演目は、3人ずつ数組のダンサーが交代で舞台に上がり、横1列に並び30分間のダンスを行います。 ただし、"立ったその場を動いてはならない"という制約をあえてダンサーに課しています。30分の時間はヒト時計の登場によって知らされ、時間を知らされたダンサーは次のダンサーに交代します。
 過去17回の上演が行われ、その中でこの演目に参加したのはダンサーだけでなく、音楽家、美術家、詩人など多分野に及び、ダンス経験のない人たちも、それぞれの方法でダンスをつくりあげました。

コンセプトの黒澤美香さんに4つの質問

Q1 lonely womanとはどうゆう演目でしょうか? まず最初に「lonely woman」を京都で上演させていただき、そして強力な方達に参加していただき心より感謝いたします。

「lonely woman」は、伝説のダンス・プロジェクトとなった「偶然の果実」(1990年〜2002年)の中で始まりました。3人で横一列に立って並びます。立った位置でダンスを創るプログラムです。「ダンサーは立ったその位置を動いてはならない。」という制約で1991年から遊ぶようにして始まりました。ヤケクソも背景にあります。85年からダンサーズとして活動を始めましたが、なにをしても「あれはダンスではない」と言われ続けていました。こんなにダンスに満ち溢れても、他の人はダンスと認めない。こんなにダンスでも、当時の定義に外れていたのでしょう。ダンスではなく、パフォーマンスだということでした。言い方はどちらでもよかったのですが、当時はこれをダンスと宣言し続けることが重要でした。そうしなければ100年経ってもダンスが変わらない硬直に恐ろしく思えたからです。

Q2 今演目を上演したことになった始めのきっかけや、これまで上演を重ねる中で変化があれば、お聞かせ下さい。 最初は今のように交代せず1組だけで2時間やっていて、「零度のダンス」というタイトルでした。後に、交代することを取り入れてみたらダイナミックで俄然おもしろくなり、今の「lonely woman」になっていきました。ヒト時計も後からの設定で、その前はタイマー代わりに音楽や照明で30分の時間経過を表していました。人数がとても多い時は6チームが過去の最高です。

Q3 これ迄のlonely womanの上演秘話などはありますか? 話しはバニョレのコンクールになります。わたしが反コンクール派なのに、なぜそのコンクールに出場する動機があったのかは忘れてしまいましたが、コンクールだから一番コンクールに場違いのものを、と反発する喜びで出場したことは覚えています。結果「lonely woman」(当時は「零度のダンス」)が日本代表として渡仏しましたが、本当に場違いでした。即興性が強すぎるということで、論外扱いだったと思います。バニョレは第二回めからは渡航費付きの待遇になりましたが、わたし達が行った第一回めはそういう待遇がなかったので、ダンサーとスタッフみんなの渡航費作りはたいへんな苦労で、そして論外だから苦い思い出です。最初にコトを起こすのはいつの時代も大変ですが、先人のご苦労を慮りました。

そのようなスタートでも1991年〜2012年までに18回も「lonely woman」上演が行われ、その中でこの演目に参加したのはダンサーだけでなく、音楽家、美術家、詩人など多分野に及び、ダンス経験のない人たちも、それぞれの方法でダンスをつくりあげてくれました。海外はアテネ、ニューヨーク、国内は東京、横浜、青森、大阪、福岡、そして今回の京都を巡り、長生きで幸運な演目です。上演回数からしてもよくよく数えると100人ではなくて200人ぐらいの人が立って踊ってくださったのだと思います。「lonely woman」で踊ったことでその後もダンスすることにした、という言葉を最近になって何度か聞き、それはそれは感動しました。

Q4 lonely womanの見所等があればお聞かせ下さい。 ダンスは飛んだり跳ねたり移動することで自由奔放さを表すとされていました。そしてダンスの訓練をしている人がダンサーで、そうでない人はダンサーではないという括りが、ついこの間までありました。「lonely woman」はそれまでのダンスに異議を唱えるところから始まっています。動かなくてもダンス、回転しなくても足を上げなくてもいい。柔軟でない人も、やったことない人もダンスする。
<すでに体が満ちて膨らんでいる。これ以上なにをすることがある。立っているだけで充分だ。>が前提です。
ダンスとはなにか、ダンサーとは誰のことなのか思考形式をひっくり返してくれるところが見所です。一番最初の「lonely woman」メンバーである平松み紀、クリタチカコ、出口大介に感謝いたします。

これまでの上演記録

1991年12月「偶然の果実8」@横浜STスポット

A
黒沢美香クリタチカコ平松み紀

1992年11月@DANCE THEATRE ROSE(アテネ・ギリシャ)

A
黒沢美香クリタチカコ武元賀寿子
B
森田恭章出口→萩原富士夫
Drifter
坂井原哲生
Instrument
森田:ユニフォーム、ローラースケート/出口:煙草/坂井原:小銭

1993年3月「偶然の果実13」@横浜STスポット

A
高野尚美森田恭章武元賀寿子
B
出口→砂山典子太田恵資
C
萩原富士夫川口隆夫黒沢美香
Instrument
太田:バイオリン/萩原:ブリーフ、進軍ラッパ
25min.index
A summertime(A.Ayler)/B lonely woman(O.Colman)/C the black and crazy blues(R.Kirt)

1995年3月「偶然の果実21」@横浜STスポット

A
黒沢美香岡時彦<武井よしみち/span>
B
清水唯史西脇さとみ法水麟太郎
C
川野眞子唐沢克彦妻木律子
25min.index
黒沢:録音物 dance of satan(G.Logan)
出口:録音物 A 四十雀の鳴き声/B 大瑠璃の鳴き声/C 駒鳥の鳴き声
Instrument
岡:ルーペ、ケン玉、携帯椅子、懐中電灯、巻尺、ラジカセ、時計、カメラ、etc.
清水:PA一式、ワイヤレスヘッドセットマイク、40分テクスト
川野:ハンドバック、ティッシュペーパー

1996年3月「偶然の果実25」@横浜STスポット

A
萩原富士夫須田直子塚原恒太郎
B
黒沢美香ノムラヒハル戸部有美子
C
高貝弘也Ichi出口→
choreograph
唐沢克彦(Bグループ)/黒沢美香(出口→)
Instrument
萩原:キャベツ/塚原:トランペット/Bグループ:大量のせんべい、紙片
高貝:化石(ノジュール)、ハンマー、リュックサック/ichi:缶入り緑茶

1997年3月「偶然の果実29」@横浜STスポット

A
明乃出口→黒沢美香
B
西脇さとみ万城目純荒木順
C
平松み紀木佐貫邦子森田恭章
D
土井教義SEIDO渋谷英文
choreograph
唐沢克彦(Bグループ)
ハト時計
堤武秋/出口→/塚原恒太郎
※「ハト時計」は、〈25min.index〉を演奏行為によって形成した。
Instrument
明乃:ドーラン、襤褸/出口:金盥、パチンコ玉/Bグループ:mini harp
SEIDO:ストロボ、ノイズ発生システム、釣竿、etc./堤:テナーサックス
出口:金盥、マレット、スティック、ブラシ、ハーモニカ/塚原:トランペット

1998年3月「偶然の果実33」@BIWAKEIスタジオ

A
黒沢美香SEIDO武元賀寿子
B
北川美和子土井教義堤武秋
C
荒木順山田せつ子妻木律子
D
矢尾伸哉唐沢克彦椎啓
明り時計
原口佳子(照明・回転灯)/出口→(懐中電灯)
※「明り時計」は、〈25min.index〉を回転する電灯によって構成した。
Instrument
SEIDO:大リーグノイズ養成ギブス/土井:ラジカセ、録音物、トレーニングウェア
堤:テナーサックス/荒木:立ち位置固定用拘禁人魚衣裳
矢尾:髪切りシャツ切りズボン切りハサミ/椎:人体着用型発振共鳴器

2000年3月「偶然の果実38」@ムービング・アース・スタジオ

A
矢尾伸哉越川知尚唐沢克彦
B
森田恭章武井よしみち万城目純
C
出口→SEIDO千野秀一
D
山田せつ子深谷正子黒沢美香
ヒト時計
木佐貫邦子/高貝弘也
※「ヒト時計」は、〈25min.index〉を(二重の?)ソロ・ダンスによって構成した。
Instrument
矢尾・唐沢:手足緊縛紐/越川:紙コップ、糸、コンビニ袋
万城目:トカゲ忍者の衣裳、ラジカセ、録音物/SEIDO:頭上取り付け式回転翼、刃物
深谷:蛍光灯/木佐貫:黄色いコート、キャップ、サングラス、ラジカセ、録音物、紙吹雪
高貝:響鳴石、ハンマー、薄林の僧侶の衣裳

2001年4月3日「偶然の果実41」@大倉山記念館

A
小林嵯峨クリタチカコ西脇さとみ
B
高野尚美SEIDO斉藤直子
C
大橋めぐみ武田英子室野井洋子
D
オガワユカ尹明希手塚夏子
ヒト時計
有本裕美子/黒沢美香
※「ヒト時計」は、〈25min.index〉を変態性の陰謀とダンスによって構成するだろう。

2002年5月1日「偶然の果実43」@大倉山記念館

A
SEIDOサエグサユキオ田村彩
B
森田泰章斉藤清美出口→
C
手塚夏子萩原富士夫越川知尚
D
黒沢美香クリタチカコ平松み紀
ヒト時計
THE MIRRORBALLS (オガワ由香・椎名利恵子・西脇さとみ)

2006年1月22日@アウガ5F AV多目的ホール(青森)*企画制作:国際センター青森

A
安田美代工藤香里小山内孝夫
B
椎啓武蔵恵美子長内真理
C
上野和美辻村誠也川山初美
D
木村玲奈青木千史高橋康子
E
黒沢美香中村佳世子中村彩子
F
木村貴子杉澤朋美鈴木恵美子
ヒト時計
小倉俊一

2006年8月@Art Theatre db(大阪) ※記録なし

2006年9月@国際芸術センター青森(青森) ※記録なし

2007年10月@The Kichen(NY)

A
Jennifer Monson黒沢美香Margarita Guergue
ヒト時計
スカンク、Hahn Rowe

2009年1月31日@横浜開港記念館6号室

A
Lisa KoisoSEIDOきたまり
B
大倉摩矢子関準太郎手塚夏子
C
黒沢美香クリタチカコ平松み紀
D
サエグサユキオ山賀ざくろ萩原富士夫
ヒト時計
首くくり栲象、塚原恒太郎

2009年2月@パピオルーム(博多) ※記録なし

2012年9月23日@KAAT神奈川芸術劇場中スタジオ

A
のぎすみこSEIDOノムラヒハル
B
宇野敦子谷川まり黒沢美香
C
クリタチカコ越川知尚青木研治
D
遠藤寿彦平松み紀サエグサユキオ
ヒト時計
萩原富士夫、さそうすなお、何が欲しいんだ?
Instrument
SEIDO:装着型音声拡声筒/ノムラ:白のチュール、傘
谷川:座布団、綿/黒沢:セロハンテープ
クリタ:ビジネスバック×シンセ、小型マイク、スピーカー、銀のお盆
越川:バイオリン、カセットデッキ 青木:スーツ、帽子、サングラス、詩集、腕時計、櫛
遠藤:ワゴン、幽霊型ロボット、ノートパソコン、電源、ワイアレスマイク、パワードスピーカー、折りたたみイス
萩原:バケツ、乗用車養生用ビニール、ファーマフラー/さそう:ペットボトル水
何が欲しいんだ?:ミニドラムセット、ギター×アンプ、ベース×アンプ
タイトルlonely woman (初演1991年)
コンセプト黒沢美香
出演【A】
花本有加 (KIKIKIKIKIKI) 木下出 荻野ちよ (双子の未亡人)

【B】
京極朋彦 (京極朋彦ダンス企画) 宮階真紀 (カウパー団)  
岩下徹 (即興ダンス/山海塾)

【C】
勝野タカシ エヴァンズ・ポール(コンタクトインプロ・京都) 茂山童司

【D】
黒沢美香 秋山みなも 北村成美

【ヒト時計】
菊池航 (淡水) 竹ち代毬也 中川裕貴、バンド (中川裕貴、横山祥子、菊池友里子)
instruments 【木下】
空のペットボトル(2リットル)×4、譜面台+楽譜、鍵盤ハモニカ、ラジカセ、スーツケース、鈴のついたストラップ、鈴のついた蝶ネクタイ、冊子×4

【宮階】
透明ごみ袋、ビニールチューブ+給水袋、約1mの筒状のアルミホイル、モール・チェーン×4

【勝野】
ピアニカ、タラブッカ

【茂山】
扇子

【秋山】
トウシューズ

【黒沢】
赤いチーフ
日程2013年 7月5日(金) 18:45
場所元・立誠小学校 3F 自彊室 google map
料金2,000円(当日券 +300円)
上演時間120分

関連PROGRAM

INTERVIEW

黒沢美香くろさわみか

振付家/ダンサー 横浜生まれ。1982~85年NY滞在中ジャドソン・グループを追いかける。「黒沢美香&ダンサーズ」、『薔薇の人』ソロダンスシリーズを進めながら、最新は踊る大学教授陣 「ミカヅキ会議」を結成。子どもの文化芸術体験事業や、社会・地域連携プログラムに参加。舞踊コンクール第1位、新人賞、優秀賞、舞踊批評家協会賞、日本ダンスフォーラム賞、ニムラ舞踊賞など受賞。日本のコンテンポラリーダンス界のゴッドマザーと称されている。(写真 | のぎすみこ)
http://www.k5.dion.ne.jp/~kurosawa/