Dance Fanfare Kyoto

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中西ちさと ダンスファンファーレ3 レポ (Dance Fanfare Kyoto vol.03)

前置き  私はDance Fanfare(以下ファンファーレ)の前身であるWe dance KYOTOから参加し、4年間皆勤出演している唯一のダンス関係者、ということで(筒井潤さんも参加されてますけど演劇関係者)きたまりさんから「ぜひレポートを書いてください」とご連絡がありました。レポートとか本当苦手なんですけど、今ぼそぼそとPCに向かって書いています。

ダンスにおけるサービスについて  打ち上げの帰り道は大阪組の筒井さんと私の二人。4年間皆勤組で帰るのはなんだか象徴的でもあり、そこでお話ししたことが面白かったのでその話をします。
話題の一つに「ダンス作品におけるサービス」がありました。「サービス(とそれに付随するおもてなし等の言葉)」というキーワードはダンスコメディの演出家である上田誠さんが何度も稽古中におっしゃっていた言葉です。しきりに「お客さんにおもてなしの気持ちを忘れないで」、「お客さんに伝えることが重要です。そこはサービスして上げてください」と話されていました。ダンスの現場でそういった事を聞いた事がなかったので、新鮮な印象を受けました。

 そもそもなんで私がダンスコメディの演出助手をしたかというと、上田さんが「ダンス初心者なので相談役として参加してほしい」ということでして。上田さんは私の主宰するグループのウミ下着の作品を2つ観ていらっしゃって、「これならダンスの面白さがわかるかも」と思われたそうです。多分、それは私が演劇の勉強を大学でしていたこともあって、会話をするシーンがあったり、どうやってダンスができていくか?みたいな事を解剖しながら作品にしたりしていたことがあるかと思います。解説付き公演と称して、動きがでてきた由来とかを副音声で流したりもしました。私はサービス、という言葉は使いませんが、しばしばお客さんに「伝える」こと「わかるであろうシーンやキーワード、モチーフ」を作品に挿入することを心がけています。そのことが良いとも、悪いとも言える作品を作り出している気もしていて。私がウミ下着というグループで創作していることは亜流な気がするし、ともすれば観客に媚びている作品をつくっているのかもしれない。それでもこの方法をとることで、ダンスの面白さをわかってくれる人が増えるのならとつくり続けてるんですね。

演劇のサービス、ダンスのサービス  話をファンファーレに戻します。『呼び出さないで!アフタースクール(以下呼びださないで!)』は絶妙なサービス精神を持った作品となりました。出演しているダンサーはセルフパロディをしている感覚があったと思うし、普段ダンスを見ないお客さんは「あ、こういう見方してもいいんだ?」と気が楽になったと思います。ダンスをよく見るお客さんにとっては「コンテンポラリーダンスをパロった作品」として楽しめる舞台となりました。
 『呼び出さないで!』は役者である土佐和成さんがダンサーの内的なものからでてくるダンス(意味の分からないもの・ボケ)に対して突っ込みまくるという作品だったんですけど、それってあくまでも演劇なんですよね。演劇という外殻の中に、ダンスが入っているというか。ダンスをテーマにしたコメディ。演劇されてる上田さんの作品だからそれでいいんです。いいんですけど、この作品がめっちゃ喜ばれているのが半分嬉しく、半分悔しい気持ちがある。正直。私は。
 ダンスをしている側からすると、なんだかダンスが演劇に助けてもらったみたいで、ダンスってそんなに助けてもらわないと面白くないものなんかな?と思ってしまった。それは私が普段ウミ下着で作品つくってることにも言える事なんですけど…手放しで喜べないと言うか。

 では演劇的サービスをまとわずに、ダンス作品をつくる…というかダンスにおけるサービスを使って、いやそもそもサービスという言い方が良くないのかもしれない。ダンスが持つ根源的な、なんかわからんけど凄い動き、であるとか観た事ない動き、だとかを有効に使えばいいのかな…と思うんですけど、まず劇場にお客さんをつれてくるための仕掛けもがすごく必要だなと。

じゃあどうやって入れるんだよ  ってことになりますよね。今年もプログラムに演劇、美術という異ジャンルとの出会いが半数を占めてることもあり、外とのつながりを求めてるなとおもってました。閉鎖的にならなくてとても良いと思うんですけど、それでもダンス見る人のため、ダンスやってる人のための公演みたいな雰囲気があったんじゃないかな…と私は感じました。
 例えばフライヤーのイメージとかが強いと思ってて。情報量が多いのはわかるんですけどあの文字だらけのチラシ、ある程度アーティストのことを知ってないと怖くて観に行けないよな…って。もっと親しみやすいようなデザインができたらいいとおもうんですけどどうでしょう?
 でもそんなことないのかな。ウェブは今までで一番コンテンツも盛りだくさんやったし面白かった。ダンスコメディのインタビューとか、特に塚原さんときたまりさんのメールのやりとりはめっちゃ刺激的やったし、広く読まれるべきテキストですよね。でもやっぱり早め早めに情報出していかんと、よっぽど興味ある人以外は読まないし、そのコンテンツさえ知らないかも。

 ファンファーレに来たお客さんは確実に何か得て帰ってるなって実感してるからこそ、とにかく新規の客層を獲得するべきやと思います。筒井さんとも話してたんですが、私も含めてダンサー…コレオグラファーってめっちゃ創作において純粋すぎるんですよね。そういう人ばっかりやないんですけど、戦略とかはおいといてとにかく自分の表現したいことをやれたらいいって思ってる。それはそれで良いんですけど、時間芸術な限りその場で、しかも伝わるものを見てもらわない事には話にならないんやないかと思うんです。

補足として ねほりはほり振付家との丁寧なインタビューは魅力的だけど、ダンサーもねほりはほりされても面白かったんじゃないかなと思いました。というのは参加者のダンサーが「ダンサーとして参加してる身としては普段のダンス公演と変わらない」と話していたことがあったから。
時間の制約等あるのはしかたないけど、振付家とは異なる視点で語られる言葉に興味があります。
すいません、美術✖ダンスは観れなかったのでもっと公演数かキャパをあげて欲しいです!


あーやっぱり前述の通りレポートは苦手です。上記に上げた事はほぼ自分の課題でもあります。ダンスを巡る環境がもっと楽しく深くあればいいなと、そして視野を広げていけたらと強く思った次第です。

以上。

中西ちさと

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AUTHOR

中西ちさと(ウミ下着)なかにしちさと

ウミ下着主宰。演出家・振付家・ダンサー。1986年大阪府出身・在住。大学在学中にコンテンポラリーダンスやポストドラマ演劇に出会い、創作を始める。2012年国内ダンス留学一期生に奨学生として参加。近年は演劇作品への振付・出演も。2013年~釜ヶ崎芸術大学ダンス部・講師。
http://umishitagi.com/