interview 西岡樹里作品 ねほりはほり 《つくる前》 | PROGRAM |DANCE FANFARE KYOTO

interview 西岡樹里作品 ねほりはほり 《つくる前》 >> PROGRAM >> TOPPAGE

川那辺香乃→西岡樹里 インタビュー (1回目) 6月2日(日)京都 四条烏丸周辺
夕方からの初稽古を控えたお昼前に、西岡さんの初回インタビューは行われました。インタビューと初稽古。
そんな二重の緊張を抱いている西岡さんがリラックスできるよう、インタビュアーの川那辺さんが時々笑顔を見せながら、やわらかい対話が重なっていきました。

川那辺:
ダンスを始められたのはいつごろですか?
西 岡:
3歳でバレエを始めました。
川那辺:
コンテンポラリーダンスに触れたのはいつごろですか?
西 岡:
子どもながらにどうしても型にはまった踊りをするのが嫌になって、バレエは2、3年で辞めてしまいました。そこからは、ジャズダンスをやりました。大学を選ぶ時に、自分のやっているダンスが仕事になるのか、それを技術的に学びたいと思い、神戸女学院大学という舞踊専攻がある大学に入りました。そこでグラハムメソッドとバレエと、バレエの流れの中にあるコンテンポラリーダンスを習いました。その後、DANCE BOXという劇場に行った時に、あらためてコンテンポラリーダンスというものに出会ったという感じです。それは自分が大学で習っていたのとは違って、一体これは何なんだろうと思ったところから、興味を持ちました。
川那辺:
今、作品を作る動機はどのようなところにありますか?
西 岡:
私の中で、人だけがこの世界を作ってるのではないという気持ちが非常に強くあります。たとえば光とか水とか建物とか、色んな存在やいろんな領域にあるものがバランスを取りながら"今"というものができているんだろうなと。そう思った時に、人だけを中心に作品を作っていくということに疑問を感じて、そうじゃない作り方を考えたいと思うことが、ひとつの動機になっていると思います。
川那辺:
なぜそういうことを考えているんですか?
西 岡:
たとえば社会や、世界を考える方法ってたくさんあると思うんですが、それと同じように芸術というのも世界を考える方法のひとつだと思っています。ダンスも、世界を考える方法としてあったらいいと思っている中で、自分の身の回りにあるもののバランスや関わりを考えるようになったのかなと思います。
川那辺:
ダンスのおもしろさをどんな時に感じますか?
西 岡:
身体一つでものをつくることができること、だと思います。また、身体感覚というのは、ダンサーが強く持っている機能の一つだと思っていて、その感覚で自分以外のものと新しい出会い方ができることが、踊ることの面白さになっていると思います。
川那辺:
その感覚でどのように周りや観客と繋げていけるかということでしょうか。ただ、それを言葉にして話すのは難しいですよね。
西 岡:
でも、言葉を越えられないとだめだろうと思っています。同時に、越える前の言葉をどういうふうに作っていくかってことは、その向こう側を見るために大事だろうなと思っています。
川那辺:
なぜ、言葉を越えることが必要だと思うんですか?
西 岡:
言葉がなくても、ダンスはありえると思うんですが、自分が作る踊りにたくさんの人に出会ってほしいって思った時、踊り自体は生でしか見られない、すごくゆっくりな媒体なので、出会うまでのプロセスとして、言葉が必要なのではないかと思っています。
川那辺:
踊っている時に、どんなことを考えていますか?
西 岡:
作品によって違います。もともと、ダンスって言葉が先にあって、それに合わせるように踊りが出来てきたわけではなくて、なにか意識的な動きや美しいと思われるような動きを、日常の動きの中に埋もれさせないために、ダンスって名前が生まれてきたんだと思っています。たとえば、こうする(人差し指を伸ばす)。これに名前がなければただの一瞬の動きだけど、「指をさす」という言葉をつけると、「指さして」という言葉でもう一度やることができる。踊りもそれと同じで、先に動きがあってそれに名前を付けるから、それを繰り返すことができる。だから、ダンスはひとつのものじゃないし、ダンスという言葉の中に動きがあるわけではない。そうなると、作りたいもののために、いろんな身体の使い方っていうものもあるだろうなと思って。
川那辺:
その時々で、身体の使い方を考えながら踊っているということですか?
西 岡:
そうですね。
川那辺:
今回の作品では、どういう手法を使って制作しようと考えていますか?
西 岡:
始めにお話した、いろんな領域のものとか存在がバランスをとりながらその瞬間を作っている、という私の感覚を頭に置いた作り方になると思います。
川那辺:
それはダンサーと共有していくのが難しそうですね。
西 岡:
顔合わせをした時は、かなり時間を使って話をさせていただいたんですが、これからも彼らとどれくらい共有できるのか、そこの作業に時間をかける気がします。難しいと思うのは、身体ってすごく曖昧で、人によって全然違いますよね。それを、理解して共有するために、特に今回の作品では言葉が使われたりするかとは思います。
川那辺:
先ほど言われていた、自分ひとりで生きているのではない、ということは、ある言い方では「持続可能な社会」や「インタービーイング(相互共存)」と呼ばれる考え方と似ている気がします。その考え方は、いつごろから意識し始めましたか?
西 岡:
始めは、作品を作っている時に光とか音に興味を持ちました。ただ、その分野に対する知識がなくて、絵画とかや他のジャンルの人と話したい、感覚を共有できないにしても、そこを知りたい、という欲求があり、そこから身体以外のものにも目を向けるようになりました。そしてその行為を、自然と日々の中でもやるようになっていったのだと思います。
川那辺:
振付をしている時に意識されていることはなんですか? 特に、ダンサーとして出演する時と、振付に専念する時の違いがあれば、教えてください。
西 岡:
ダンサーと振付家は、違うことを行っていると思っているので、自分が振付をする時にはできるだけダンサーとして出演しないようにしています。明らかに違うことは…、責任を負う場所が違う、ということでしょうか。
川那辺:
今回はどのような稽古になりそうですか?  たとえば、同じ内容の身体づくりを一緒にすることはありますか?
西 岡:
出演者と私が共有できる身体の土台みたいなものは、作っていこうと思っています。それが言葉である時もあるし、身体の動きをベースにするっていうこともあると思います。
川那辺:
そういったことから、徐々に振付に移行していくと。
西 岡:
そうですね。ただ、ダンスを作るっていうよりは、ダンスらしきものを生むにはどうしたらいいのかということを、ダンサーと話しながら作っていけたらいいと思っています。
川那辺:
ダンス"らしきもの"という言葉が出ましたが、西岡さんは、自分の作っている作品はダンスそのものだとは思っていないんですか?
西 岡:
ダンスという名前で枠組を決めて、ここからここまでがダンスです、ということもあるかもしませんが、それが人が勝手に決めた範囲のような気がしていて。それを取り払ってみてもいいんじゃないかと思っています。結局見たいものが意識的な動きとか美しい動きということであれば、言葉でくくられた"ダンス"って呼ばれるものを目指して作らなくてもいいと思っています。
川那辺:
それは西岡さんとしてはダンス作品になるのでしょうか? "ダンスのようなもの"って言った時に、なんとなくですが、自信の無さを感じました。
西 岡:
自信がないわけではなくて…ダンスっていう名前なんてなんでもいいって思った時に、その周辺のものも含めて示せるといいなと。ただ、私が今言っていることは、かなり時間がかかると思う一方で、稽古時間がちょっと少ないのが気になっています。
川那辺:
確かに、最初の身体づくりなどの時間が少なくなってしまいそうですね。でも、その土台作りを一度すっ飛ばして作品を作ってみるのも、もしかしたら面白いかもしれません。
西 岡:
もしかしたらそれぐらいの風通しのよさがあっても面白いかもしれないですね。
 
- インタビューを終えて -
西 岡:
インタビューでは一つの事を言うために、相手に伝わる言葉を様々に探しました。そうする事でその一つの事が磨かれ、より明確になっていくように感じました。 ですが、その私の作業は、聞いている側には紛らわしい場合もあります。こうして改めて文字で話した事を見ると、言葉不足だったり他人と共有しにくい言葉を使っている部分を見つけ、伝わりにくくなっている事に改めて気づかされました。作品や活動に関わる表現方法の一つとしても、人に伝わり、かつ私なりの言葉というものをどう作っていけるのか、引き続き考えていきたいと思っています。
川那辺:
改めて原稿を読んでみると、自分が投げかけた質問が、予め仮定して発しているように見えて反省した。まるで「こういう答えを待っています」というように質問を投げる、というか置いているように感じる。いまや、LINEやfacebookなど他者とのコミュニケーションツールが当たり前のように存在しているが、どれも本音から一歩引いたような、軽薄な言葉が行き交っている。その理由として、みんな「わかっているフリ」をしていることが前提になっているのではないだろうか。今回のインタビューでは、私自身「わかっているフリ」をせず、「わからない」ことを前提に話を進めていくことが作品を理解していく上での糸口になる気がしている。 西岡さんは言葉を1つ1つ選び取って、言葉に真摯に向き合おうとしていた。彼女の魅力を少しでも伝えられるように、私も彼女に真摯に向き合いたい。

PROGRAM4 ねほりはほり
7月6日(土) 15:00開演 (高木作品のみ上演+トーク)
7月6日(土) 17:15開演 (西岡作品のみ上演+トーク)
7月6日(土) 19:45開演 (増田作品のみ上演+トーク)
上演時間 各回60分 (作品上演 約30分+トーク 30分) | 上演場所 音楽室
定員
各回60名 | 料金 各回500円 (当日+300円)

7月7日(日) 15:00開演 (ねほりはほり3本立て) ※トークなし
上演時間 約90分 | 上演場所 音楽室 | 定員 60名 | 料金 1,500円 (当日+300円)
webサイト予約フォーム || シバイエンジン


タイトル ||
「名前のないところから」

振付 || 西岡樹里  出演 || 辻本佳 | 長洲仁美
インタビュアー || 川那辺香乃 (BRDG)

いわゆる「振り付け」作業では、踊り手のからだに動き出すきっかけを与えて、それを続ける動機を渡していくことをやったりする。それに踊り手がからだを動かされていくのだとすると、そういった変化を生む可能性は人以外のモノにも同じようにあると思う。きっかけや動機は人の手の中だけに納められるものじゃない。この世界にはあらゆるモノが存在している。空気さえもその一つ。その関係と、からだの存在を浮き上がらせてみる。